僕として僕は行く。

旧・躁転航路

スイッチ

 僕には「小説のスイッチ」と「勉強のスイッチ」とがあって、これらは排他的にしか成立できない、つまりは片一方がオンの時には他方はオフになるようになっている。しかもこのスイッチはーそれがよいところでもあり、また悪いところでもあるのだがー、容易に切り替えができない。金属のレバーは長い時間雨ざらしにされてきたせいか、動かそうとすると錆びた接触部分がギイギイと音を立てて、不快感を撒き散らす。そんな調子だから、動かす時にはかなり力がいるし、油をさして潤滑さを手に入れたいのだけれど心にさすべき油がいったいどういう種類のものなのかまるで検討もつかずにいるから、結局は毎回ギイギイと音を立てて力任せに操作する羽目になっている。しかしながら、一度スイッチが入ってしまえば、ちょっとやそっとのことでそのモードは途切れないし、結果的にそれは結構な期間長続きする。
 なんでこんな風になってしまったかはわからないし、もしかするとはじめからそうだったのかもしれない。つまり、集中して小説や勉強に取り組むことは、僕にとっては、最初から、重たいレバーをグイと動かしてしまうことを意味していたのかもしれない。だからもしかすると、今後の振る舞いによっては、どっちかに振り切れたレバーが戻らなくなるのかもしれないし、はたまた、頻繁に動かすように心がけていれば、自然と稼働範囲を広げていくのかもしれない。いや、もしかすると、油を手に入れて自由自在に調整できるようになるのかもしれない。何れにせよ、自分がどういう風になっていくのかなんて僕には到底知り得ないことなのだろうし、変化が近づくまでーいや、実際に変化してしばらく経つまで、それを感知することなど出来ないのかもしれない。