僕として僕は行く。

旧・躁転航路

フィクション

無題

職場にさぁ、ヨシミさんっていう、もう定年間際の、孫もいるような人がいるんだけどさ、もう随分昔の人だからさ、まあこういう言い方もアレなんだけど、やっぱり若い子らと比べると言葉遣いも古くてさ、何も書いてない真っさらなコピー用紙のことをパイパン…

ステージA

トイレに座ると、肛門に鋭い痛みが走る。自分自身の肛門の形状については詳しくないけれど、これまで他人のそれを観察した限りでは楕円に近い形をしているものだと思うが、この痛みはそんな円を縦に引き裂くような痛みがある。自分の身体の中にある丸みがこ…

幸福な似顔絵

リビングシェルフの一角には、二年前に式場紹介所で無料で描いてもらった俺と妻の似顔絵が飾ってある。俺の笑顔は本当はもう少し引きつっているものだと思うが、似顔絵のなかの俺は自然な笑顔へと上手く描き変えられている。もちろん、上手く笑えないからと…

When The Music's Over

僕は別にその場にいる必要は無かった。僕はそこをとうに退職していたし、それでも何かの縁でそこに居合わせた時に、その破局の瞬間の当事者として、そこにいなければならないと思った。幸い、ちょくちょく顔を出す機会があったからか、誰も僕を変な目で見た…