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僕として僕は行く。

旧・躁転航路

Year 2014 The Best 30 Album

はい。

 

 

30.Reachy Prints / Plaid (Warp)

 Warp Recordsの古参・Plaidの10枚目のアルバム。RDJの新譜もそうだったように、やはりPlaidの新譜も実に自分たちらしい、一聴して彼らの曲だろうなとわかる、少し神経質で、だけど概ね可愛らしいようなIDMチューンが並んでいる。彼らの曲から感じる可愛らしさのようなものは、ともすればオドロオドロしくなりがちなWarpの面々の中ではかなり貴重な存在のように思う。残念ながら先日の来日公演にはニアミスで行けなかったのが心残り。

 

 

 

 

 

 

 

29.Everyday Robots / Damon Albarn (Warner)

 Blur及びGorillazのフロントマン・Damon Albarnの実質的なソロ1stアルバム。生音中心のトリップ・ホップを基調に、ロウ・テンポで音の隙間を活かした粒選りの楽曲群が並ぶ。BlurよりもGorillazがツボな自分のような人間がこれに食いつかない筈もない。耳触りとしては、何となくWillcoのYankee Hotel Foxtrot等を彷彿とさせる柔らかさがあって、更に立ち入って聞いてみると、コーネリアスのようなサンプリングの感触を活かした音の配置や、モータウン的なアプローチ、そして昨今のインディ・ポップの庶民性などがDamonのポップセンスを浴びて再解釈されていく47分間。

 

 

 

 

 

 

 

 

28.Present Tense / WIld Beasts (Domino)

 イギリスはカンブリア出身ロックバンドの4thアルバム。個人的には、3rdまでの彼らは別につまらなくも面白くもない凡百なインディ・バンドという印象だったけれど、このアルバムを機に今聞き直すとなかなか悪くない気がしてきた。さて、そんな再評価を僕に迫らせたこの1枚は、テンポも全体的にゆったりめで、かなりミニマルに推移していく中で、上に乗っかってくる音の音色選びがいちいちニクいし、そもそもメロディも良い。

 

 

 

 

 

 

 

27.Ghost Stories / Coldplay (EMI)

 1996年ロンドンで結成されたロックバンド・皆様もご存知Coldplayの通算6枚目のアルバム。僕の彼らへの態度というのは、愛:憎=3:7ぐらいの比率で愛憎入り乱れているのだけれど、今回のこのアルバムについては全面的に愛が勝る1枚となっている。特に彼らに対してムカツイていたのは、これは往年のBump Of Chicken等にも顕著なのだけれど(最近のBumpについてはノーコメントで)、曲の途中までいい感じなのに、いきなりめちゃくちゃダサいディストーションギターで安っぽい「バンド感」を演出しようとしてきたり、そもそもソングライティングはすごく良いのに全面的にアレンジで台無しにしてたりする点なのだけれど、今回のこのアルバムは、全体的にアレンジも控えめでシンプル、展開も無理がなく、まるで「静寂の世界」の頃にまで戻ったかのようで、最初から最後までチープにならなかったことに初聴時には驚かされたほど。絶対にライブなんか行かないと誓ってたけれど、こんなしっとりさせてくれるなら行ってもいいかもと思うと同時に、解散の噂が出たりしてるので、もしかして行っとかないとマズいかも…ぐらいにまで心境は変化してきている。

 

 

 

 

 

 

 

26.Hurt / Syrup16g (Daizawa / UK Project)


 まさかのリユニオンを果たしたSyrup16gの9枚目となるスタジオ・アルバム。フロントマン・五十嵐隆がPVでいきなりボブになって現れ衝撃を受けた僕は、大阪公演のチケット確保が叶わず、友人の助力を得て東京国際フォーラムまで見に行ったりもした。まあそれは音そのものとは無関係だけれど、肝心のアルバム自体の話をすると、やはり特筆すべきは五十嵐隆パンチラインの数々。中でも僕が気に入っているのが「もう君と話すには俺はショボすぎて 簡単な言い訳も思いつかないんだ 戸惑いの奥にある強い不信感を 跳ね除ける力が残っていたらいいのに」という一節。ああ、この最低の心境を最高のメロディで歌ってくれるリリシストはやはり五十嵐隆をおいて他にはいないのだな、と強く思いなおさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

25.Hotel Valentine / Cibo Matto (Chimera)


 1994年にNY結成後、Stereo★TypeAでカレッジチャートを中心に話題を呼んだ、日本人2人組を中心とするガールズ・デュオ Cibo Mattoのリユニオン・アルバム。正直な話、本当に全く期待せずに聞いたのだけれど、それを完全に裏切る完成度の高さに驚き。架空のホテル=Hotel ValentineでのCheck inからCheck Outまでを表現したコンセプチュアルな1枚で、ヒップホップを下敷きにしつつ、非常に多彩なジャンルを上手く取り込んで独自の世界観を構築している上、どことなくシックな洒脱さがあるところもGorillazをなんとなく彷彿とさせる。なお、余談だが、このアルバムは第一次Cibo Mattoの頃から関わりのあるSean Lennonが主宰するChimera Recordsからのリリースだが、このLennonの血は日本人女性に強く惹かれてしまう何かがあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

24.Barragán / Blonde Redhead (kobalt)

 カズ・マキノを中心にニューヨークで結成されたロック・バンド Blonde Redheadの通算9枚目のアルバム。正直、自分の抱いていたBlonde Redheadへの印象とはかなり違っていたため最初は拍子抜けしたものの、何度か聞いているうちに強烈に忘れられなくなってくる不思議なアルバムだった。全編通して非常に音が少なくミニマルで、かなりタイトな印象を与えるが、次第にそれがシックに聞こえてくるので面白い。

 

 

 

 

 

 

 

23.Mr Twin Sister / MrTwin Sister (TWIN GROUP/INFINITE BEST)

 ニューヨークの南東の島・ロングアイランドで結成されたMr Twin SIterの2011年以来2枚目となるアルバム。デビュー時はチルウェイヴの文脈から注目されていたようで、今作ではそういったドリーミーな雰囲気を踏襲しつつも、様々なジャンルへのアプローチを一斉に取り込みながら、彼ら独自のサウンドを構築していった模様。なお、僕の初聴時のメモには「マイブラの中で主導権を確立した山下達郎がフィメールボーカリストを迎えたけれど、最終的にはアンビエント勢に全て持っていかれるアルバム」と書いてあって、一見すると意味不明のようにも思えるが、確かに間違っていない感想だとも思う。

 

 

 

 

 

 

 

22.Syro / Aphex Twin (Warp)

 エレクトロニカ界の生ける伝説であり、かつ稀代の変人 Richard D.JamesことAphex Twinの13年ぶり6枚目のスタジオ・アルバム。音としては、Aphex名義よりもAFXの頃のRDJに近いかなと個人的には思ったりもして、RDJにしては置きにいったな、というと印象も悪いけれど、原点回帰に近い1枚になっていて、特にAFX名義のアルバムを必死こいて聴きこんできた自分には意外性もないものの、安心して(?)聞けるRDJサウンドとなっていて満足度は高い。ただ最新鋭のプロダクションで作られた音だとまたなかなか印象が違うのだなという発見もあったり。ついでに、一部で話題になっているけれど、これを書いているつい数日前にD’angelloの最新作が電撃リリースされてまさに青天の霹靂。さて、そんな折、ジャンルこそ違えど中々立ち位置の似ているような気がしないでもないDとRDJという稀代の天才アーティスト2人の新譜を絶賛している人々の多くに対して、お前普段からファンク/IDM・テクノなんて絶対に聞いてなかっただろ、と突っ込みたくなる現象が発生しておりまして、現に何故か一枚ぽんとAphexだけ捩じ込まれた年間ベストとかを見ると何かしら思うことがあったりなかったり。ただ、そもそもRDJというキャラクターの世間一般における受容のされ方自体がそういった切り口からだったのだろうということも理解できるし、IDMが不可避的に持つであろうキャズムをRDJだけが乗り越えているのだと捉えるならばそういったことも十分にあり得るのだろうとは思うが…。実際、WarpからもRDJに負けず劣らず聴きこみ甲斐のある新譜は沢山リリースされてるし、それらはRDJの作る物が好きならきっと虜になること間違いなしなのだけれど、いまいちそれが見えてこない、Aphex Twinの新譜聞いてIDMめちゃくちゃ掘ることにしました!なんていうのをあまり聞かないのは、やはりRDJを使って、「俺は幅広く聞いてるんだぜ」というマストなアピール・アイテム/アイコンとして使われているからなんじゃないかなという印象は否めず、正直なところ、あまり見ていて心地の良い風景ではなかった。まあでもそんなことは実際には些細なことで、むしろそういうライト層がもっと騒いで下されば、もしかすると今年のフジのヘッドライナーもあり得るんじゃないかと思うので、もっとバカみたいに騒いでくれたほうが良いような気もしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

21.Grouper / Ruins (Kranky Records)

 アメリカはポートランド出身のソロ・ミュージシャン Grouperの10作目となるスタジオ・アルバム。彼女のキャリアはアンビエントやドリーム・ポップの文脈で語られることが多いようだけれど、今作に限っていえばシンプルなピアノの弾き語りで、ピアノと声の他には、わずかにチリチリというテープ起因と思われるようなノイズがそこかしこに散りばめてあるだけである。まさにRuins=廃墟で彼女が1人、グランド・ピアノの前に座って、静かに、つぶやくように歌い続ける姿が、再生ボタンを押すと同時に眼前に広がってくる。

 

 

 

 

 

 

 

20.Held In Splendor / Quilt (Mexican Summer)


 アメリカはボストン出身の3ピース・サイケ・ロック・バンド Quiltの2011年以来となる2枚目のアルバム。シンプルなバンド編成であり、打ち込み/サンプリングの占めるウェイトも決して多くはないのだが、しかしながらしっかり引きこむソングライティング術は個人的にも見習うべきところは多い。

 

 

 

 

 

 

 

19.Tyranny / Julian Casablancas + The Voidz (Cult Records)


 The Strokesのフロントマン・Julian Casablancasのソロ2作目のアルバム。電子音もサンプリング音源もギターもベースもドラムも、そして人間の声さえも、何もかもを同列の音として混淆させて一つの世界とするというRadioheadが始めたプロジェクトが、まさにニューヨークの風でブラッシュアップされた、とでも形容できそうな1枚。更にJulianがStrokesでも時折覗かせるプログレ趣味もここに上手く融け合って、他ではありえない彼(ら)だけの音がついに完成の日の目を見た。映画:インターステラーを見た時も思ったのだが、これは一つのジャンルの始祖となる作品で、その誕生にリアルタイムで立ち会えたのだ、という興奮を覚えた一枚。残念ながら来年初頭の来日は中止になったが、夏あたりまたどこかで見れたら良いなあ。

 

 

 

 

 

 

 

18.Ultraviolence / Lana Del Rey (Polydor/Interscope)


 もはや説明不要だと思うが、2012年のアルバム Born To Dieが世界中で一大センセーションを起こした、Lana Del Rey=Elizabeth Woolridge Grantの3枚目のアルバム。個人的には全くハマらなかった前作とは打って変わって、今作ではThe Black Keysのメガネじゃない方のプロダクションもあってか生音主体の音作りに変化し、もともと生々しく、そしてアンニュイなLana Del Reyの世界観に見事マッチした傑作。

 

 

 

 

 

 

 

17.Mess On A Mission / Liars (Mute)


 ロサンゼルス出身のエクスペリメンタル・ロック・バンド Liarsの通算7枚目のアルバム。前作から大々的にIDMサウンドを取り入れて評価をぐんと高めている彼らだが、今作でもその路線を踏襲しつつ、歌モノではよりキャッチーに、ボーカルレス・トラックではよりディープにと、それぞれの方向での深化。こちらもどんなライヴをするのか気になるところだが、今のところ機会には恵まれていない。

 

 

 

 

 

 

 

16.Ritual In Repeat / Tennis (Communion Music)


 2011年デビュー、アメリカはデンヴァー出身の夫婦デュオ・Tennisの3枚目のアルバム。どの曲も派手さは無いけれど、耳馴染みの良いメロディと、それを活かす大人しめのアレンジが独特の洒脱さを演出している。プロデュースにはThe Black Keysのメガネのほう等が参加とのこと。朝から車で出かけて、薄暮の帰り道、こんなアルバムが流れていたら何となく幸せだろうな、という気がする。

 

 

 

 

 

 

 

15.Sun Structures / The Temples (Heavenly)

 イギリスはノーサンプトンシャー出身の4人組サイケ・バンド、The Templesのデビュー・アルバム。どサイケなボイシングとハーモニー・ワークスを現代のサウンド・プロダクションで録ったらめちゃくちゃ良くなりました、というパターン。あんまり意識してなかったのですが、今年はBeatlesを聞いていたみたいでその辺りの関係もあってかスッと入れた気がする。ちょくちょく来日しているのもあってそのうち見る機会がありそうなので楽しみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

14.Ghosts Of Then And Now / Illum Sphere  (Ninja Tune / Beat Records)


 マンチェスターで活躍するDJ、Illum SphereことRyan Hunnのフルアルバム。こういう世界の人って結局何枚リリースしてるかよくわからなかったりするので、詳しいDiscographyはまた今度ということで。Radioheadの最新アルバム・TKOLのリミックス盤に参加したりしている内にグイグイと人気に火がついてきた人の模様。グリッチポップあり、インダストリアルあり、アンビエントあり、歌モノありとやはりマルチな才能を全曲通して披露。下でも書きましたが(このランキングは1位から順番に降順で書いています)、Ninja Tuneは今おもしろいDJをいっぱい抱えているんだよなあということと、マンチェスターは今もダンス・ミュージックの聖地なんだなあという感慨が、このIllum Sphereなる人のアルバムを聞いていても強く感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

13.Black Lights Spiral / Untold (Hemlock)


 実に7年前(!) ヴァイナルのみでリリースされていた、ロンドンのプロデューサー/レーベル・Hemlockのオーナー、UntoldことJack Dunningのデビュー・アルバムのCD化。徹底的に無骨なベース・ミュージックの這うような重低音は、iPhone附属イヤホンなどでは音割れ必至。なお、彼の主宰するレーベル・HemlockはJames Blakeを発掘したこと等でも名前が知られているようだけれど、こんな比較に意味があるかはさておき、僕はJames BlakeよりもUntoldのほうがはるかにしっくり来る。シンプルにおどろおどろしく、そしてその分何も考えずにのめり込めるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

12.Wicked Nature / The VInes (Wicked Nature Music)


 Beatles Meets Nirvanaだなんて言われて、2002年にアルバム・Highly Evolvedでデビューしたオーストラリアのバンド・The Vinesの3年ぶり5枚目のアルバム。成功してからというもの、色々なジャンルに手を出してはみたものの、元来あまり器用なバンドではないようでどれも中途半端な印象は否めなかったけれど、今作ではもう分かり易いほどにグランジに回帰し、シンプルな力強さを取り戻している。個人的に、「ああ、曲を作る、歌をうたうというのはこれぐらいシンプルでもそもそもは良いんだよな」という、「ヴァース・コーラス・ヴァース」構造の再発見もあり、とてもよく聞いたアルバムとなった。なお、2枚組22曲だが1曲あたりが長くはなく、また適度に肩の力の抜けたミドルチューンも多く入っており、楽曲にバリエーションがあるため、ボリュームを感じさせない聞き易さがあることも評価できる。

 

 

 

 

 

 

 

11.The New Today / 2562 (When In Doubt)

 

 オランダを拠点に活動する、2562ことDave Huismansの4thアルバムとのこと。どうやらダブステップ・シーンにおける重要人物のようですが、その辺りのコンテクストについては来年以降の課題ということで、逆にそういったコンテクストにちゃんと乗って来なかった自分のような中途半端なダンス・ミュージック・ラヴァーにとっても、違和感なく聞ける一作。ミニマルあり、ダーク・アンビエントあり、今話題沸騰中(?)のゴルジェありで恐らく様々なジャンルへの取っ掛かりとして聴くことだって出来そう。

 

 

 

 

 

 

 

10.Pe'ahi / The Raveonettes (The Best Dies)


 デンマークコペンハーゲン出身・2003年のデビュー以来7作目を数えるThe Raveonettesのアルバムは、まさに原点回帰・ノイジーでメロディアスで、それでいてどこかダークな綺羅びやかさを持った1枚となった。自分の中での彼らといえば、なかなかに早いビートにもっとノリノリでシンガロングできるようなメロディが乗るバンドだったので、最初このアルバムを聞いたときには同名の別アーティストかと考えたほどだったけれど、元々彼らのルーツを考えればこういうアルバムが出ていても何もおかしくはなかったのだと納得。XINLISUPREMEをメロディアスにして美麗なハーモニーで仕上げたようなそのサウンドは、聴く度に謎のノスタルジーを強烈に呼び起こす。どういうところを刺激されているのかはわからないのだけれど、猛烈に泣きそうになる1枚。

 

 

 

 

 

 

 

9.Zaba / Glass Animals (Wolf Tone Studios)

 イギリスはオックスフォード出身のインディ・ポップ・バンドのデビュー・アルバム。いま聞くとColdplayがHail To The Thiefやってみました的な作風にも思えるし、これはもうバカウケ必至、研究に研究を重ねたんだなー、逆に売れ線すぎるぐらいじゃないかな〜クソ〜ニクいな〜でも聞いてしまうな〜とか思っていたのだけれど、皆様の年間ベストを拝見していてもほとんど名前が挙がってこないので、かなり肩透かしを食らっている次第。アルバムを通してジャングル(音楽ジャンルじゃなくて実際のジャングルっぽい、要するにドンキーコングのBGM)っぽい、パーカッシブで、しかもつい歌いたくなるメロディアスなミドル・ダンス・チューンの応酬。オックスフォードということもあるし、曲調もあいまって勝手にRadiohead Childrenなのだろうなと思い、シンパシーをビシバシ感じて何度も聞いた1枚。

 

 

 

 

 

 

 

8.Joined Ends / Dorian Concepts (Ninja Tune / Beat Records)


 ウィーン出身のマルチ奏者兼プロデューサー、Oliver Thomas Johnsonによるプロジェクト、Dorian Conceptの通算2枚目のアルバム。Cinematic OrchestraやFlying Lotusとも親交が深い模様。一聴すると中々に奇妙なのだけれど、それでいて強烈に耳馴染みのよいメロディ、不思議に肌触りのよい未知の化学繊維のような音色のチョイス、そしてゆっくりと身を委ねるようにしてダンスできそうなリズム、変化しすぎることもなく、かといって短調でもないミニマル感。とにかく、全てが「まさに調度良い」というポイントを総ざらいしている。個人的にはもうちょいブリブリ踊らしてくれる展開のある曲があれば…と思わないこともないけれど、これはこれでアンビエントに、ゆっくりと休日の朝風呂なんかで聞きたい1枚だなと聞き返しつつ考えたり。余談だけれど、自分の中では完全にブレイク・ビーツ専門レーベルだったNinja Tuneからこういうリリースがあるのは意外で、もっと掘ってみたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

7.Whorl / Simian Mobile Disco (ANTI-)

 イギリスはロンドンのエレクトロ・デュオ・Simian Mobile Discoの4thアルバム。元々はKlaxonsCSSのようなニュー・レイヴの文脈から注目されていた人たちなのだそうだが、それらとは明らかに一線を画す徹底したミニマリズムは、朝4時すぎのクラブのような、チル・アウトする寸前の心地よさを発生させている。ミニマル・テクノにはあまり食指が伸びてこなかった自分のような人間にも、クラウト・ロックアンビエントの文脈からかスッと入り込めて何も考えずにユラユラ聞ける傑作。何も考えたくないときに再生することが多かった1枚。

 

 

 

 

 

 

 

6.Faith In Strangers / Andy Stott (Modern Love) 

 2006年デビュー、マンチェスターのDJ/プロデューサーであるアンディ・ストットの4thアルバム。ダーク・アンビエントやポスト・インダストリアル等と呼ばれているというそのサウンドは、昨今のグリッチ・ポップの流れを上手く汲み入れつつ圧倒的に暗鬱で、それでいてダンサブルな音像を与える。サウンド・システムによっては音が割れてまともに聞こえないであろう、ギリギリを攻めるそのサウンドコラージュ術は、巷間賑わす昨今の音圧競争とやらがアンダーグラウンドで一つの結実を見たものと捉えても良いだろう。もしストットのようなDJが多くプレイしているのがマンチェスターの今日であるなら、かつてのサマー・オブ・ラヴのように、借金をしてでも体感してくるべき潮流なのかもしれない、そうとまで思わされる1枚だった。

 

 

 

 

 

 

 

5.Warpaint / Warpaint (Rough Trade)


 2009年にEPでデビュー、そして2010年にリリースされた1stアルバムを聞いて以降、僕がゴリ押しし続けているロサンゼルスの4人組ガールズ・バンド・Warpaintのセルフタイトル・セカンド・アルバム。以前のような分かり易いギターリフやメロディこそ減ったものの、その分深みのあるアンサンブルを聞かせてくれるアルバムとなった。本国では、Zola Jesus等と一緒くたに、ダークなニューウェーブということでダークウェーブ等と呼ばれているようだが、Zolaのようなゴス方向のダークさというよりは、Joy Divisionのような冷たいダークさに包まれていて、アート・ロック(死語?)の文脈からの評価も高い模様。こちらも時流に乗って、音数を絞りながらメロディとハーモニーの妙技、そして音色のコントロールとスロウなディスコライクなリズム隊で成立しているサウンドです、と言い切ればそれだけなのだけれど、これらのそれぞれの要素が本当にハイレベルなので、何度聞いても飽きが来ない。今年は迷ったらこのアルバムを再生していた記憶が強い。そろそろ単独来日していただきたいのだけど、これだけ騒いでいる日本人が多分自分しかいないので、当分は望めない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

4.Blank Project / Neneh Cherry (Smalltown Supersound)


 完全に新人女性ラッパーだと思っていたけれど、この記事を書くために念の為に調べていると、この人むしろかなりキャリアのある人の模様。スウェーデン出身だけど、父親はシエラレオネ人で、彼女自身はリップ・リグ・アンド・パニック等いくつかのバンドに参加後、1989年後にソロ・デビュー。そして、このリップ・リグ・アンド・パニックというのが、勘が良いニューウェーブ・フリークなら気づくのだろうけれど、伝説のニューウェーブ・バンドのザ・ポップグループの分裂後のバンドの一つである。ちなみに、僕はポップ・グループには高校生の頃に度肝を抜かれていて、その当時からなんとか音源をかき集めたけれど、派生バンドまでは追えていないという状況だったのが、この奇妙な符合を契機にまた頑張って探してみようと決心してしまった。なお、余談が続くが、昨今のニューウェーブリバイバルのおかげか、なんと奇跡の来日が決まったザ・ポップグループの音源は、それこそ僕が高校生だった7,8年前は権利関係で揉めに揉めて一部を除き絶版のままだった。それが最近ようやく手に入りやすくなったようで、もしご興味があればぜひ手にとっていただきたい。さて、Blank Projectの話に戻すと、上のライブ版ではそこまで体感できないかもしれないが、スタジオ版の特徴としては、とにかく音数が少ない。かなりファジーなベースとドラム、あと少量のパーカッションという、いわばリズム隊だけでトラックが構成されていて、そこにNenehの絶妙なラップが乗ってくる。聞いていると、音数を減らすのが昨今の一つの大きな潮流で、そしてその一つの極地がメロディのみになったGrouperであり、他方の極地がこのNeneh Cherryであって、いわば骨格しかないこのアレンジでさえも、曲としては一つの成立を見ていることに対し、主に作曲者としての自分の立ち位置を強く問い直させられた。やはり安易に音を重ねず、むしろそぎ落としていくことで成り立つ美学も存在するのである。

 

 

 

 

 

 

 

3.Commune / Goat (Sub Pop)

 

  スウェーデン発・エクスペリメンタル・ロック・バンドGoatの1stアルバム。デビュー自体は2012年のEP・World Musicとのことだが、残念ながら僕は未聴のまま。実質的に初めて触れたこのアルバムは、どの曲も一瞬でその場の空気を塗り替える、圧倒的な土臭さに満ちていて、初めて聞いた時は思わず笑ってしまった。仕掛け的には何のことはない、中東音楽をバンド・サウンドで忠実に再現しているだけなのだが、とにかく完成度が高く、一度聞いたら二度と忘れられない、何なら夢にそっくりそのまま出てきそうなキラー・リフの応酬。しかもパーカッションも絶妙で、ダンサブルなのも非常に時流に即している。一度インディ・ロックのDJイベントなどで流してみて反応を伺いたいような、キワキワで、それでいて一度ハマると抜け出せない中毒性を兼ね揃えた稀有な1枚だ。

 

 

 

 

 

 

 

2.Say Yes To Love / Perfect Pussy (Captured Tracks)


 2012年結成、アメリカはアングラの聖地・ニューヨークのハードコア・パンク・バンドのデビュー・アルバム。過剰にアジテーションするボーカル、1リフを基調にひたすらゴリゴリ進むトラックと、のたうち回る生き物のようなフィードバック・ノイズの応酬。アルバムを通してわずか30分ほどで、まさに駆け抜けるような印象を残すこのアルバムは、音としてはノー・ニューヨーク最新形でありながら、バンド名からも察せられるように、ニューウェーブ全盛期と見紛うようなフェミニズムのメッセージ性が「叫び」となり見事に混ざり合っている。ここまで力強いラブソング…それも、誰かへの限定的な「愛」ではなく、「愛」という概念そのものへの強い肯定…を僕はこれまで聞いたことがなかった。まさに度肝を抜かれるとはこのような体験のことで、インパクトは圧倒的だった。このアルバムのリリースは2014年3月のことだったが、その段階で既に僕の中では年間ベスト最上位格というのは決まっていて、僕は3月にして既に、新譜をちゃんと掘り始めて本当に良かったと、心から喜んだのを昨日のように思い出すことができる。

 

 

 

 

 

 

 

1.Supermodel / Foster The People (Columbia)


 銃乱射事件を今まさに起こそうとしている少年の心境を歌ったPumped up Kicksでセレブの仲間入りを果たした彼らを待っていたのは、ただひたすらに輝かしいだけの栄光の日々ではなく、これで本当に正しかったのか、これが本当に待ち望んでいた未来なのかと自問自答を繰り返す日々だった。Foster The Peopleのフロントマン Mark Fosterは、しかし、彼自身の問いと、より普遍的な問い…すなわち、資本主義における成功とは一体何なのかという問い…の間に相似形を見出し、それを突き詰めることで、偉大すぎる前作のプレッシャーを跳ね除け、Supermodelという、いささか皮肉すぎるタイトルをもつこのアルバムを完成させた。本当に良い芸術とは、僕らを問うてくるものだと信じている僕にとっては、Markが提起した種の問い…幾度となく再提出されては、その都度かなりのリアリティを僕らに突きつけてくるこの問い…を今までの人生で最も考えた年だった。それが、昨年、小山田壮平andymoriというバンドにピリオドを打つまで問い抜いたものと近しいのは、何も偶然の符合などではないと気付いた僕は、僕も僕自身の方法でこの問いに感応しなければならないと強く誓い、錆びついて止まったままだった僕の時計の針を、折れないように、それでいてちゃんと進むように、ぐっと押し進めることに決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑感

 まず今年は、バンドものがなかなか面白かった。やはり、アメリカのアンダーグラウンドな、突き放すような刺々しさが、いくつになっても大好物だし、その空気感はバンドものじゃないとしっくり来ない。バンドものはもう死んだというような口ぶりはよく聞くけれど、僕は10年後、たとえばWarpaintはリアルタイムで追ってたよ、とティーンに自慢できるバンドの一つだと思う。ついていけない人を置き去りにしながら、今日もバンド・サウンドは今でもその可能性を押し広げ続けている。
 また、まさかのAphexのリリースもあったり、Plaidが新譜を出して来日したり、Clarkがセルフタイトルを出したりと、今年はIDMも元気だった。ただ、バンドものでいうと、かつてのシーン、たとえばシューゲイザーだったり、アルビニっぽい音だったりが、丸パクリじゃなくて、綺麗に消化されたものがここ数年出てくるようになったけれど、IDMがそのように消化されてもっとポップなシーンに出てくるには、まだまだ本家本元のIDM勢が元気だし、時間はかかりそう。そういった意味で、Liarsのような、IDMをバンドでやる、それもあんまりRadioheadの暗鬱な方向に寄らずに、というのは先駆的存在だと思う。
 あと、IDM以上に、マンチェスターのダンス・ミュージック・シーンが今めちゃくちゃ面白いのだろうなというのは強く感じた。できればこの肌で感じに行きたい。

 総論としては、バンドものとIDM/ダンス・ミュージックという、僕のライブラリのうち8割は締めるジャンルが元気だった今年は、僕にとっては非常に実り多い1年だったように思う。リアルタイムの音楽をがっつり聴くのはとてもスリリングで楽しい。最近の音楽が面白くないという人は、最近の音楽の深層まで辿りつけていないだけだと思う。いつの時代だって表層にあるものは、一部を除いて多分そこまで良くない。昔のランキング上位とかも案外見たことも聞いたこともない名前が結構ある。
 なお、来年は…これは毎年言ってることだけれ…ヒップホップにもっと詳しくなりたい。プリンスが好きだったりして、ファンク方面はまあまあ聞けたり、女性SSWに対する謎のフェチズムのせいで女性ラッパーはがっつけたりもできるので、そのあたりをとっかかりに、良さが分かるようになりたい。