僕として僕は行く。

旧・躁転航路

女体化

 女体化願望のある男性っていうのは多分少なくないとおもうんだけど、とここまで書いて、いや少ないだろうと思い改めた、知人に一人いるだけなので、やっぱ少ないとおもう、まあそういうのはおいといても、女体化願望みたいなのは一部に存在するのだけど、自分はあんまりそれがずっとわからないままで来ている。男性的な欲望をもったまま見た目が女性になるとかいうのなら少しわかる、女湯入れるし。でも、女体化願望のある方々は、明らかに、男性性を完全放棄して、女性と同一化したいという願望がある。それは広義のセクシュアリティなのかもしれないけど、性自認のズレとかそういう感じではない。女装癖があるとか、そういう方向に向かう。いま確認すると、変態番付 - アンサイクロペディアとかに出てくる人も、そういう、性自認のズレとかまではいかないほどの、女体化願望がある人がちょくちょくいる。
 で、僕はそういう風な女体化願望というのがあんまりわからなくて、そういう風に感じる瞬間みたいなのがあるのだろうか、ってずっと思ってたんだけど、なんと、ついに、こないだそういうのがあった。このシチュエーションなら、男性的欲望抜きで、女性になりたいって思える、それが。
 それがどういうあれかっていうと、新しいバイト先、そこは女性のほうがぜんぜん多いんだけれど、そこで、先輩女子数名が、後輩女子の、大学1回生の女の子のほっぺたを、わー柔らかい、ほらほら触ってみてー、とかいって、順番に触ってた。冷静に考えるまでもなく僕も触りたかったのだが、それはもう一切の性的欲求抜きで、柔らかくてふにふにした後輩の女の子の手触りを楽しみたいとかそういう話で、そこらの猫を揉みしだく、みたいなのと似たような話なんだけど、僕が触ると、なんかやっぱりそういう感じが多少なりとも出そうな気がして、気が引けて、いいなあって見てた。ここで、もし僕が女子なら、後顧の憂いなく、ひっぱったりつねったりできたのに。 でも、よく考えると、もし触れるとしたら、あのタイミングしかなかったんだろうな、ともおもう。というのも、後日、じつは僕もあの時ふにふにしたかったんだ、って言い出したら、本格的に変態っぽい感じがしてくる。あ、この人ずっとあたしに触りたかったんだ、怖い…ってなる可能性が高い。いやちがう、そういうことじゃなくて、あのですね、みたいな言い訳しだしたらいよいよ気持ち悪い。もう何をいっても単なる気持ち悪い人である。だから、あのとき、共時性みたいなものの勢いを借りて、コンテクストから逸脱しない感じでうまくのれたら、僕もふにふにできただろうし、同時に、それが唯一のチャンスだった。今度、そのバイト先の歓送迎会があるから、その時に飲んだ感じで行こうかと思ったけど、ますますセクハラっぽい。もうだめだ。結局、あそこでのれなかった僕が、あの子のほっぺたをふにふにするには、もはや女体化して、女性として出直して、似たようなコンテクストが発生するのを待つしかない。どちらを選んでも厳しい。修羅の道って感じがする。